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2021.07.28

『GajA』ERIMAKI inc.連載「あのひとに会いにいく」の番外編。

Writter:ERI

つくることは、たのくるしい。

 

四国旅マガジン『GajA』の連載を依頼された2020年夏、タイトルを「あのひとに会いにいく」と決めて、ERIMAKIが一番会いたい人に会いに行った。訪ねたのは、愛媛県今治市にある四国八十八箇所霊場第五十七番札所の栄福寺。再会したかった白川密成(みっせい)さんは、このお寺のご住職さんで、『ボクは坊さん。』(ミシマ社)の著者でおなじみ、愛媛の文壇スター。

 

2018年、わたしたちが出版したリトルプレス『よむ処方箋01  失恋』で、お坊さんという立場から、死生観を織り交ぜつつ、失恋の痛みを和げてくれるすばらしいエッセイを寄稿してくれた。失恋の絶望さえあしたの活力にできる特効薬のような文章を受け取ったとき、「さすがだな」と思ったし、「かなわないな」とも思った。

 

密成さんが執筆をはじめたきっかけは、「ほぼ日刊イトイ新聞」(ほぼ日)。密成さんは24歳で、おじいちゃんから寺を継ぐ。若き住職は、一般の人からすればわかりにくい仏教の世界に、新しいアプローチをつくりたいと考える。そこで思いついたのが、愛読していた「ほぼ日」に文章を掲載してもらうことだった。ほぼ日を主宰する糸井重里さんに企画提案。連載の試作品をいくつか読んでもらったのち、掲載が決まったという。

 

多くの人が目に触れる文章は、編集者による校正がつきものだ。密成さんの場合、担当編集者だけではなく、ときには編集長の糸井さんみずから、原稿の感想やアイデアを伝えることも多かったのだとか。感想のメールがパソコンに届くのは、多くが、世の中が眠る午前2時、午前3時頃。そんなやりとりを繰り返し、連載は231回を数えた。説得力がありながらも、自然体で、耳に心にストンと入ってくる密成さんの文章力は、回数分繰り広げられた修業のたまものでもあるだろう。

 

その一方で、ほぼ日を毎日更新し何年も続けていく源にある、糸井重里というクリエイターのすごみ、「本気で楽しむ」ための努力の一端を垣間見た気がした。世の中に届くものは、考えて、悩んで、もがいて生まれたものと、そうではないものとが入り混じる。その違いに意識を向けようが向けまいが、気づこうが気づかまいが、前者のものは生き残るし、後者のものは消えていく。そんなもの、なのかもしれない。

 

ERIMAKI  inc.  2021331日結成。せっかくやるんだったら10年先、20年先に残るものをつくりたい。まちのソメイヨシノの花が爛々と舞い散るこの日、考えて悩んで、愉しみくるしむ、あらたな幕がこっそりとひらいた。(ERI

 

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